封印解禁！羽生のオペラ座の怪人

五輪で二度の金メダルを獲得した羽生結弦選手が、2014-2015シーズンに初めて披露したフリープログラム『オペラ座の怪人』は、試練の時を経て再び姿を現しました。中国杯での事故や、その後の手術・リハビリを乗り越えた彼の演技は、氷上での壮大なドラマと、力強いジャンプ、繊細な表現が見事に融合したもので、観客を魅了しました。本記事では、そのプログラムの背景や技術的な見どころ、最新の演技について詳しく解説します。

『オペラ座の怪人』誕生の背景

羽生選手は中学時代から「いつかこの曲を滑りたい」と思っていたミュージカルの音楽を、五輪チャンピオンとして2014-2015シーズンに採用しました。楽曲は映画版のサウンドトラックから複数の楽曲を組み合わせ、アンリ・ヒューズ監督によるオリジナル楽譜を基に構成されました。振付はシェイ＝リーン・ボーンが手掛け、クラシックとモダンダンスが融合したドラマティックな演出が生まれました。

苦難の封印シーズン：事故とリハビリ

羽生選手は中国杯の練習中に他の選手と衝突し、頭部や顎をテーピングして演技を続けました。その後のNHK杯では車椅子で帰国し、尿膜管遺残症の手術や足の捻挫と、次々とアクシデントに見舞われました。「これは自分の実力」と厳しい自己評価を下した彼は、演技を封印する決断を下しました。競技プログラムの構築だけでなく、心身の再生が求められる厳しい挑戦となりました。

GPファイナル＆NHK杯での初演

2014年のグランプリファイナルとNHK杯で披露された演技は、4回転から2回転のトウループの連続成功や、トリプルアクセルからの3回転トウループなど、驚異的な技術が光りました。しかし、ミスも目立ちました。技術と表現を両立させる挑戦として、多くの注目を集めました。

封印から蘇生：スターズ・オン・アイス2023

「スターズ・オン・アイス2023」の横浜公演で羽生選手は、『オペラ座の怪人』の封印を解きました。黒い衣装を纏ったファントムとして演技に臨み、暗転からの決めポーズでは観客が総立ちしました。4回転から2回転、トリプルアクセルなどの連続ジャンプを見事に決め、疲れを見せることなく4日間の公演を駆け抜けました。

音楽と振付のドラマティックさ

使用される楽曲は『オペラ座の怪人』のサウンドトラックからのメドレーで、冒頭の静けさから高揚感へと展開する構成が活かされています。羽生選手は、ジェスチャーや視線を使ってファントムの心情を表現しました。振付師シェイ＝リーン・ボーンの演出は、バレエの優雅さと現代舞踊の奥行きを見事に融合させ、氷上に劇的な世界観を作り出しました。

技術的見どころと演技解析

プログラムの中盤では、4回転サルコウから3回転トウループへの連続成功が当時世界初の偉業となりました。ステップシークエンスはレベル4を維持し、エッジワークの深さと素早いテンポ変化が特徴です。動きの緩急やリンク全体を巧みに使うレイアウトも、観客を飽きさせない魅力の一部として高く評価されています。

衣装・照明・演出のこだわり

衣装は黒のタイトフィットのシャツとパンツで、オペラ座の怪人を象徴する神秘性を強調しています。照明はリンクの中央をスポットライトで照らし、暗闇から浮かび上がるファントムの姿に劇場的な雰囲気を与えています。演出チームは、音楽の転調に合わせてフットライトの色温度を調整するなど、細部まで計算された演出を行っています。

まとめ

羽生結弦選手の『オペラ座の怪人』は、王者としての挑戦と苦難を象徴する作品であり、封印を経て再び氷上に蘇った名プログラムです。音楽、振付、技術、演出がすべて結実し、観客を劇場へと誘う美しい芸術作品として語り継がれることでしょう。今後、羽生選手が挑むプログラムにも同じ熱意と創造性が期待されます。