チェルノブイリの放射線を食べるカビ：未来の放射線シールド技術

チェルノブイリの放射線を食べるカビ：未来の放射線シールド技術

1. チェルノブイリの放射線を食べるカビとは

チェルノブイリ原子力発電所の事故現場で発見された「放射線を食べるカビ」は、「クラドスポリウム・スファエロスペルマム（Cladosporium sphaerospermum）」と呼ばれる黒カビの一種です。このカビは、放射線を吸収してエネルギーに変換する能力を持ち、極限環境でも生存できる特性があります。

2. 発見の経緯と意義

1991年、遠隔操作ロボットを使ってチェルノブイリ原子炉内の調査が行われた際、破壊された原子炉4号機の壁に沿って繁殖しているカビが発見されました。このカビは、放射線をエサにして成長していることが確認され、科学者たちに大きな驚きを与えました。

3. カビの特性とメカニズム

クラドスポリウム・スファエロスペルマムは、大量のメラニンを含有しており、致命的な放射線レベルの中でも生存できるだけでなく、放射線を吸収して化学エネルギーに変換することができます。この特性により、放射線シールドとしての可能性が注目されています。

4. 放射線シールドとしての可能性

研究者たちは、このカビを利用して放射線を遮断するシールドを作ることができると考えています。実際に、国際宇宙ステーション（ISS）での実験では、カビが放射線の約2%を吸収することが確認されました。理論上、21cmの厚さのカビ層を作れば、火星の年間放射線量を完全に遮断できる可能性があります。

5. 宇宙での実験と成果

NASAの協力のもと、チェルノブイリで発見されたカビのサンプルがISSに送られ、30日間の観察が行われました。実験の結果、カビが放射線を吸収し、地上以上の成長速度を見せることが確認されました。この成果は、将来的に宇宙飛行士を放射線から保護するためのシールド技術として応用できる可能性を示しています。

6. 未来の応用と課題

このカビを利用した放射線シールド技術は、将来的に宇宙ステーションや月面、火星の基地、さらには船外活動を行う宇宙飛行士を保護するために応用されることが期待されています。しかし、技術的な課題も多く、特に火星の寒冷な環境でのカビの育成や水の供給方法など、解決すべき問題が残されています。